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ツーリング日:≡2001/7/14〜16≡
2泊3日伊豆一周ツーリング記




道の駅 箱根峠 スタンプ

  走行コースはこちら


 2001年7月の14、15、16日は3連休。16日はうちの会社が特別に休みなのだ。別に有給休暇取ったワケじゃない。つまり、今月は14、15、16と、20、21、22の2回も3連休があるって事。どっちか天気の良さそうな日に泊り掛けでツーリングしようと思っていた。ただ、今住んでいる所から3日で行って帰ってくる事の出来る良さげな場所がなかなか無かった。始めは、富士山一周や、富士山あざみ野ライン(無料道路で富士山5合目まで)完走など考えていたのだが、ある日の会社帰りの電車の中で会社の(N.S)さんに「伊豆半島一周すれば?」という一言で決定!その一言を聞いた瞬間「丁度良い距離かも」と思った。しかし、伊豆半島一周するには箱根峠は避けられない。今住んでいる藤沢から出発し、伊豆半島を反時計回りして最初に箱根峠を越えるか、時計回りをして最後に越えるか、かなり迷った。当然、反時計回りで体力のある最初の方にキツイ箱根峠を越えるのが楽だが、時計回りで回ると(自転車は左側通行なので)海岸沿いを走る事が出来る。さんざん迷った結果、海岸沿いを走り、良い景色が見える時計回りを選んだのだった。(楽をする旅なら電車とか車を使った旅をすれば良い。)
 7月に入ってから毎日のように天気予報と天気図と睨めっこ。行くなら2回ある3連休の天気の良い方に行きたい。ただ、梅雨明けが何時になるかがカギだった。天気予報を見るとどちらも晴れそうだったので14、15、16日に行く事にした。一週間も先の天気予報より近い天気予報のほうが当たるに決まってると思ったからだ。心配していた梅雨は運良く平年よりも開早く開け、雨の心配も無さそうだ。(今年の梅雨明けは7月11日。平年は7月20日頃のようだ。)
 情けない事だが出発する2、3日前はかなり不安だった。ケガしたり事故する夢を何度か見た。始めて一人で野宿する事も結構不安だった。けど、別に言葉の通じない外国に行くワケじゃないし、人の居ないような無人島に行くワケじゃない。いざとなれば人を頼って行けばいいじゃないか。楽観的に考えればいいじゃないかと思い、軽い気持ちで出発する事にした。

 出発する14日は5時に起床。あれほど不安だったのに起床した瞬間行く気満々。おっしゃ!行くぞぉーと気合を入れてメシをたらふく食って6時に出発。朝から快晴。本当だったら4時半位に出発したかったのだがあまり早朝から出発すると急いだ旅になりそうだったからチョット遅く出発した。しかし小田原辺りまで平均速度30キロくらいのハイペース。小田原辺りまでは芦ノ湖へ行くのと同じコースだが、伊豆半島を時計回りで回るので、途中から熱海方面に向かう。
 熱海方面に向かって直ぐに急に道が狭くなってきた。いきなり自転車にとってはキビシイ道だ。しかも自転車では、西湘バイパス(有料道路)を走れない。西湘バイパスはかなり良い景色の海沿いを通ってる道なのだが、その道が走れないので山側の結構キツイアップダウンを走る事を強いられるのだ。想像していたより遥かにキツく距離が稼げない。時折海側の視界が開ける場所があるが、遥か下の方に有料道路が走ってる。あの道を走っていたら3倍位進めているんだろうなと思うが、この道から海を見下ろす景色も捨てた物ではない。

辛いアップダウンから見た海


 何度も何度もアップダウンを繰り返し、狭い道を走っていく。大型車両が結構通るので道を譲りながら走る。 意外と神経を使う。少し下って西湘バイパスの南の終点あたりで合流。ここから海岸沿いを走れると思いきや、今度は真鶴道路という有料道路がある(後から知ったのだが、この真鶴道路の一部は自転車は50円で走れるらしい)。全く悔しいもんだ。もちろん、この有料道路を走れないとなると再びアップダウンの激しい道を走る事になるのだ。今回のアップダウンはちょっとばかしキツかった。途中の自動販売機と、瓢箪(ひょうたん)のツルのある商店のような所(その時はまだ開店してなかった)で、スポーツドリンクを補給して、冷たいジュースを飲んで休憩した。それからもう少し走るとやっと真鶴道路の終点辺りで再び合流。今度こそは海岸沿いを走れるのかと思いきや、今度は熱海ビーチラインという有料道路だ。もう泣きたくなったがこればっかりはどうしようもない。道を選ぶ余地は無いのだ。あえて選ぶなら、進むか引き返すかだ。自転車の走れる道路があるだけ有り難いと思い進んだ。アップダウンをあえぎながら登って行き、下の方に見える熱海ビーチラインを見ると、豪華客船に乗船する三等船客の乗客の気持ちだ。羨ましく一等船客を眺める思い。せっせせっせと漕ぎ、なんとか熱海を越える。
 アップダウンの連続でかなり疲れたし、海がとても綺麗だったので、宇佐美の辺りで小休止だ。時間は12:30頃。殺人的な炎天下。帽子を被って、水分をたらふく摂取していないと、これだけ運動してると直ぐに熱射病や熱中症になってしまうのだろう。 昼なので太陽は殆ど真上にある。自分の走るコースに日陰など無い。ドコを走っても太陽から逃げる事は出来ない。この日の最高気温は東京で35℃。アスファルトの照り返しと直射日光を常に浴びているなら40℃を優に超えている事は確実だ。恐らく今日も熱射病や熱中症で病院に運ばれる人も多いだろう。こんな過酷な状況で走るのが結構好きだったりする。昼飯時だが、まだ腹減ってないので先を目指した。

宇佐美の辺り
宇佐美の辺り。


 宇佐美のちょっと先から県道109に入る。いままではずっとR135を走っていたがこのあたりからR135は海沿いから少し離れる。海沿いを走るなら109だ。109を走ってると城ヶ崎海岸に行く道がある。しかし、109から城ヶ島海岸へ行くには結構キツイ下りがある。下るって事は、戻る時に登らないといけないので、ちょっと躊躇したが行く事にした。駐車場はもちろん無料。自転車でここまで来た特権だ。

ピクニックコース
このピクニックコース(1.5キロ)を抜けるとつり橋や燈台がある。


 城ヶ崎海岸につり橋や、灯台があるのは知っていたのだが、駐車場から1.5キロ程歩かなくてはならない事は知らなかった。予定よりも進めていないし、アベックや家族連れがいっぱい歩いている中、独りで歩くのは寂しいなと思い少し行くのをためらったが、折角ここまで来たのだから行くことにした。
このピクニックコースはあちらこちらで地面に岩や木の根が剥き出しになっていて多少歩きにくかったが木漏れ日の挿す涼しい森の中を歩け、途中断崖絶壁の海岸に荒々しく波がぶつかる絶景ポイントが幾つかあり1.5キロの道のりも楽しく歩けた。
ピクニックコース終点
ピクニックコースの終点。このすぐ近くにつり橋と燈台がある。写真撮らなかった(^^;


 つり橋と灯台を見て同じピクニックコースを戻ってきてまた出発。さっき下ってきた道を必死に登ったのは言うまでも無い。
 109からR135に繋がるちょっと手前の食堂でちょっと遅い昼食。(14:00)愛想のいいオバチャン。アジの開き定食680円。地図を見ながらご飯が出てくるのを待っていたのだが、もう14時だというのにまだ距離が稼げてない。今日は下田まで行きたいと思っている。急いで食って道を聞いて出発。
 伊豆高原を越え、熱川に着いた。そう言えば、専門の卒業旅行に来たなと懐かしみながら通過。東伊豆の辺りもアップダウンが激しく泣きそうになりながら進んで行く。走ってる遥か下の青く澄んだ海をみると、ココから飛びこんだら気持ちいいだろうななどと思う。「崖から飛び降りる」ではなく「海に飛び込む」だ。勘違いしちゃいけない。飛び降りで楽になりたいワケじゃなく、海に入って体を冷やしたいのだ。間違いなく気持ち良いだろう。
 17:30頃、ヘトヘトになりながら下田に到着。日の入りは19時頃なのでまだ時間がある。途中のコンビニで今夜の夕飯を購入し、風呂に入れそうな所を探してR135を進んで行く。すると、下賀茂に「銀の湯 会館」という施設を発見。さっそく入った。大人2時間900円 + ロッカー代100円。実質1,000円だ。ちょっと高い気がしたが、一日中走って汗だくだったし、疲れを取りたいという気もあり入った。

影
銀の湯のちょい前で撮影。オイラの影

P7140021.JPG
銀の湯 会館

ついでに銀の湯会館のパンフレット
   


1時間ほど足をマッサージしながら湯につかっていた。半分のぼせ気味で上がり、休憩所の柔らかいソファーに座りジュースを飲んで体を冷ました。あまりに快適な温度とソファーで危うく眠りそうになったので意を決して立ち上がった。
 銀の湯会館を出たのは18:20頃。う〜んサッパリ♪空はまだ明るいがもう直ぐ日没だ。早く野宿ポイントを探さなければ。R135を進んでいくと小さな公園を発見。公園というか、ゲートボールする所なのだろうか?でもブランコや滑り台はある。今日はココで寝る事に決めた。国道沿いなのに車の数は少ない。ホントにココが国道?と思ってしまう程道が狭く交通量も少ない。そろそろ空も暗くなってきた。暗くなったらテントを張りにくいし、蚊が集まってきたので素早くテントを張った。今日は暑いのでシュラフは要らなそうだ。銀マットだけで十分のようだ。

公園で野宿
今夜の宿 (19:20頃撮影)


 蚊を追い払いながら素早くテントの中に入る。生れて始めての単独野宿だ。今までは複数人でキャンプ場や学校の校庭に泊った事はある。でも独りは始めてだ。この辺りにはヤンキ共は来る気配は無いが、夜中に「こんな所にテント張っちゃダメだ」と言われるか不安だった。一度張ったテントを畳み、野宿ポイントを探し直すのはとても面倒臭く、辛い作業だ。テントの中でコンビニ弁当を食い、眠った。今日はとても疲れていたので、不安を感じながらも直ぐに眠れた。恐らく20時には熟睡していただろう。

14日の記録。
走行距離 152.44KM
走行時間 8:40:17 (トータルの時間は約13時間00分 6:00〜19:00)
平均速度 17.5KM/h
最高速度 50.3KM/h

最高気温最低気温天気
東京35.128.2快晴
横浜33.726.3快晴
静岡32.325.8快晴


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 2日目の15日。携帯電話のアラーム機能で4時に起床。日の出は4:30頃なのでちょっと余裕を見て4時に起きた訳だ。幸いにも誰にも眠りを妨げられずにグッスリ眠れた。疲れは殆ど残ってない。
 喉が渇いていたので近くの自動販売機でジュースを買った。まだ薄暗い通りに自動販売機の光が異常な程に明るく見えた。その光に小さな虫が近寄りがたい程大量に集まっていた。買うとき、その虫が驚いて一斉に飛び立たない様にそっと金を投入し、ボタンを押す。しかしジュースが出てくるとき今まで慎重に行動してたのがバカだったかのようなガコーンという衝撃。一瞬ヤバッと思ったがこの辺りの虫はその程度の衝撃では驚かないようだ。殆どの虫が飛び立たなかった。ジュースを飲みながら今日の日程を考える。前から考えていたのだが、海沿いに走ると土肥という所に着くのだが、そこから更に海沿いに北へ行くと(県道17号)想像を絶するアップダウンの連続の様だ。地図を見ると道がクネクネ曲がってるのがその証拠。土肥からR136を走って東(伊豆半島中心方面)へ行くとそこも結構な峠があるが土肥から北へ行くよりも幾らかは楽そうだ。どっちを行こうか迷っていたのだが、昨日のアップダウンの連続で懲りたのでR136を行く事にした。それから今日泊る場所は三島か、行ければ道の駅箱根峠にしよう。あくまで予定だ。R136とR1の交差地点に16時までに着いたら箱根峠を登り道の駅に行く事にしよう。
 歯を磨きたかったが、水道が無いので仕方なく水無しで歯を磨き、日焼け止めを塗って5時頃出発した。
 まだ朝早いので涼しく快適に走れる。この辺りは畑が多いのでこんな早朝でも畑仕事をしている人や朝のお散歩をしているお年寄りがポツポツ居る。すれ違う時に おはよう御座いまーす と挨拶すると おはようさーん と返事をしてくれる。なんか気持ちが良い。コンビニで朝飯でも買おうと思ってコンビニを探しながら走ってるといつの間にやら峠(?)に入っていた。まだ腹は減っていないが、何も食わずにこの峠を超えられるか心配だった。ハンガーノックになるのではと思いながらもガンガン進んで行く。何度かアップダウンを繰り返したがとてもこの辺りにはコンビニなどありそうも無い。仕方なく登って行く。どうやらこの辺りの道はマーガレットラインという道のようだ。道の名前はカワイらしいが、自転車にとってはかなり過酷な道である。そもそも何がマーガレットなのだ?マーガレットなんて咲いてないし。この道を作った人がマーガレットさんなのだろうか?まぁそんな事は関係ない、オイラはハラペコなままガンガン進んで行く。結構な高さまで登った。


ココはまだ低いところ。


今日も良い天気になりそうだ。


 登ってる途中、何と言う場所か忘れたが、鶏(チャボ)?がいっぱい居る場所があった。6:30頃だったと思う。あっちこっちで「コケコッコー」と派手な越えで鳴いている。自動販売機でスポーツドリンクを買い、ボトルに詰め替えてると直ぐ近くまでに鶏が寄ってきて「何かチョーダイ」という熱い眼差しでこちらを見てる。残念ながら鶏が食うような物は何も持ってない。それどころかオイラの方が何か欲しいくらいだ。 もう少しすれば従業員さんがご飯持ってきてくれるから と捨て台詞を残して去った。そこからちょっと行った所に展望広場があった。まだ7時前なのでまだ人が全然居ない。車が一台止まってて中で人が寝てるようだった。ここにも自動販売機があったので、ココアを飲んだ。疲れてる時は甘い物はいいものだ。疲れが取れる感じがする。更に先に進むとやっと峠の頂上まできたようだった。暫く下る。いつも峠を下る時思うのだが、確かに下ってる時は気持ちがいいが、なんか勿体無い気がする。あれほど苦労して登った峠が、下るとほんの10分〜20分であっけないと思うのか、折角登ったのだから暫くこの景色を堪能したいという思いがあるのだろうか。下りきるとやっとコンビニがあった。サークルKだ。最近気付いたのだが、伊豆半島にはサークルKが多いようだ。サークル K:その他のコンビニ=1:1 ってな感じだ。早速サークルKに入り、オニギリ3つとジュースを買い、外で地面に座り朝食とした。端から見れば行儀悪いと見られるかも知れないが仕方ない。朝ご飯を食ってると、3、4歳位の女の子がヨタヨタとこちらに来てオニギリを食ってるオイラをじっと見ている。自転車に荷物を積んでいる人間が物珍しいようだった。試しにオイラがニコッっと笑うと女の子もニコッと笑った。こっちが手を振ると女の子も手を振る。オニギリを指差し、食べる?と声を掛けると恥ずかしそうに首を振ってヨタヨタと駆けて行ってしまった。ちょっとばかり心が和んだ。オニギリとジュースをたいらげ出発した。
 土肥の少し手前には1キロを越えるトンネルが2本もある。しかもそんなに長いトンネルなのに歩道はあるが凄く狭いのだ。サイドバックを付けた自転車だと人とすれ違うことも困難な程だ。しかし車道を走るのは恐いから歩道を走ることにしたのだが、想像以上に危険だった。歩道は車道より20センチ位高くなっていて歩道と車道を区切るガードレールは無い。もし歩道を踏み外してしまい、車道に落ちてタイミング悪くそこに車が来たらただでは済まないだろう。なんでこんな構造になってるのか分からない。自転車の事は全く考えてない設計だ(法律では自転車は車道を走る規則になっているので自分勝手な意見なのだが。)。ガードレールがあった方がずっと有効だと思うぞ。 そんな恐い道を神経を研ぎ澄ませながらゆっくり進んで行く。2つの長いトンネルを越え終えると相当神経が疲れてしまった。この長いトンネルを越えて少し進むと「恋人岬」がある。

恋人岬
恋人岬


 恋人岬に来たって事はもう土肥町に着いたんだなと思ったが、こんな所に一人で居ても悲しいだけだ写真だけ取って先に進んだ。恋人岬からちょっと進んだ辺りで富士山が素晴らしく綺麗な所があった。これは撮影しなきゃと撮影した。

土肥から見える富士山
土肥からみえる富士山


 なんとも綺麗な景色だ。この景色を見ただけで土肥が好きになってしまった。土肥には温泉もあるし、富士山だけでなく夕日も綺麗だそうだ。思わずここに住みたいと思ってしまった。
 9:40頃土肥に到着。本当ならここからR136沿いに東へ行くのだが、土肥から少し北へ行った所に「旅人岬」があるそうだ。これは行くしかないと思いそこへ行く事にした。小さな岬だったが景色は綺麗だ。そしてなによりも名称が気に入った。

旅人岬1
旅人岬2
旅人岬


 ん〜 やっぱ旅人ならここを立ち寄らなければ。
 旅人岬の傍らに碑石があった。深い意味は無いがここに全文を書こう。



小説 旅人岬

 太陽がまぶしい光の刺を落とし
ながら、夕陽に変わる準備をはじ
めている。大きな湾がひとつの鏡
となって上空の円い炎をうつし、
目を射るほどに輝いていた。
 船が白い波の尾をひいて入江へ
と向かう。水鳥が宙を舞って、一
瞬の影を水面に描いた。それらの
光景が刻々と彩りを変えていく。
赤みと大きさを増して輪郭をくっ
きりとさせた夕陽が向こう岸から
長い朱の帯をのばし、湾の波間を
真っぷたつに割り裂いた。
 これまで夕陽は幾度も見てきた
けれど、いまほどそれを美しいと
感じたことはない。見馴れたはず
の故郷のそれが全身を染めて圧倒
するまでに力づよい、優しい感情
に満ちてあるとは知らなかった。
明日に望みをかけることが自然と
許されて、今こうして生きてある
ことに感謝したくなる。

笹倉明 (一九四八年〜)
 兵庫県生れ。八九年「遠い国から
の殺人者」により、第百一回直木賞受賞。
九六年〜九七年、静岡新聞に「人びとの岬」
を連載。その後、舞台となった土肥の
この岬を「旅人岬」と命名、小説の
タイトルも同名に改題し、九九年十一月、
日本放送出版協会(NHK出版)より
上梓した。碑文は最終章、主人公が
故郷の夕陽を称える一節である。



 どうやらこの岬は小説の舞台になったようだ。ここからの夕陽は絶景らしかったが、まだ先は長いのでここで日の入りを待つ訳には行かない。残念だが今日ここで夕陽を拝む事は出来ない。でもいつかここから夕日を見たい。
 少しここで休憩して土肥に戻り、R136を進んだ。ここからまた峠越えだ。日も高くなり、べらぼうに暑い。日陰で休憩したいのだが太陽がほぼ真上にあるので日陰なんてどこにも無い。峠の途中でお土産屋さんのような店があったのでそこで一旦休憩。このお店はおいしい牛乳があるらしかった。牛乳には、ちょっとうるさいオイラ。ここで飲まなければ牛乳好きの名が廃る。早速購入。大きなコップ一杯(300ml位)で250円。ちと高い。飲んでみると確かに美味しいが近所のスーパーで売ってる低温殺菌牛乳と同じような味だ。ちなみに近所のスーパーの低温殺菌牛乳は1リットル200円位。ん〜。。。まぁ良い。確かに美味しかったし。そろそろ出発するかなと思ったら、店先に「梅ハチミツジュース 夏バテ防止に 試飲出来ます」の文字と共にポットが置かれていた。早速試飲。味は良くないが冷たいからおいしい。3杯ご馳走になり出発(買う気は元々ありません)。少し休んだからってこの直射日光の中をずっと登っているとやはりバテてくる。日陰の中を走りたいがオイラの進む道にはそんな物はどこにもない。仕方なく炎天下の中峠を登ってると ちょっとヤバイ位キツくなってきた。気持ち悪くなってきて吐き気すら感じる。こりゃ本当にヤバイと思い、森の中に入り、日陰で休もうかと思った矢先、200メートル位先にお土産やさんが見えた。とりあえずそこで休憩しようと思ったのだがそのたった200メートルも結構きつかった。やっとの思いでお店に着いた。店の陰の日陰に自転車を置いた。結構大きなお土産屋さんだ。観光バスも5、6台止まってた。中に入るとスゲー涼しい。先ずはトイレに行き、水道で暫く頭から流水を浴びていた。トイレに入ってきた人になんだコイツ というような目で見られるがそんなの気にする余裕なんかない。こっちは命がけだ(大袈裟)暫く水を浴びるていると気分が良くなった。トイレから出てみやげ物やさんを見て回る。そしてこの旅に色々なアドバイスをしてくれた会社の先輩にお土産を買っていくことにした。買った物はビワジャム。なんでコレを選んだかと言うと、常温で保存でき、ビンに入っているのでつぶれたりする心配が無いからだ。ただそれだけ。美味しそうだったからというような理由は全く無い。3、40分程休憩してまた峠を進んだ。先ほど水を被ったのがかなり効いたようでもうヤバイ状態になる事は無かった。まぁ、暑くてダレたが、ガンガン峠を登って行く。突然トンネルが現れた。例の自転車の事を考えていない構造のトンネルだ。疲れてる時に神経を使うトンネルはキツかったが、距離が短かったので難なく越えた。越えた所に突然料金所があった。ゲ!自転車が通れなかったらどうしよう。。。今来た道を戻るのか?と思いながら、ココ自転車通れます?と聞くと「どうぞ通って下さい」とも事だった。よかった。しかも自転車は無料だ。いま来た道を戻る事を考えれば3,000円でも払ったぞ。気持ち良く通過する。通過した後看板に書いてあったのだが、さっきの料金所はトンネルの料金所だったようだ。あんな自転車のことを考えていないトンネルに金なんか払えるかぁー と思った。この料金所の辺りが峠の頂上だったようだ。このたりから一気に下った。撮影しなかったが下ってる途中の景色が凄く綺麗だった。いや、綺麗というか田舎のほのぼのとした風景だ。回りを山に囲まれた所に10軒位の民家が建ってるのだ。まさに「ツーリングはアルプスの世界です。MTBでツーリングですか? いいえランドナーです」(意味不明)のような景色だ。暫く下ってるとコンビニがあった。丁度お昼時だったので昼飯を食った。そそくさと食いまた走り出した。もう峠を下りきったと思っていたのだが、さらにまた下った。峠を下り終えると暫く平坦な道が続いた。途中自動車専用道路があるのだが、自動車専用道路と普通の道路との分かれ道の真中に「この先は自動車専用道路です」と書かれていて、どっちが自動車専用道路か分からない。取り合えず古そうな道を選んだら正解だったようだ。途中でコンビニに寄りボトルの水を補給してR1号にぶつかった。R1号・・・なんか嬉しい響きだ。この道をひたすら進めば必ずオイラの住んでる所のすぐ近くまで行く事が出来るのだ。R1に入り暫くすると今度は箱根峠に差し掛かる。16時までに峠に差し掛からなかったら、今日はこの辺り(三島)で野宿するつもりだったが、15時頃に峠に差し掛かったので今日は峠を登り、芦ノ湖の近くの「道の駅箱根峠」で野宿する事にした。すでに箱根峠は2回登った。しかも1回は一度も脚を地面に付かずに登りきった。そこそこ自信はあったが、今日はもう既に100kmくらい走ってる。しかも既に2つも峠を越えたのだ。三島側から登った事は一度も無かったが、3時間もあれば道の駅まで着けるだろうという気持ちで登った。登ってる途中山の上の方に厚い雲が覆ってるのが見えた。もしかしたら芦ノ湖の辺りは霧が濃いかもしれないなと思いながら登った。暫く登って脚が限界にきて倒れるようにして一度5分程休憩した。それからも懸命に喘ぎながら登り、そろそろ着くかな?と言う時に売店があったのでジュースを買って道の駅まであと何キロ?と聞くとあと10キロくらいだという。ショックだった。もしかしたらあち1〜2キロで着くと思っていたのに。少し信じがたかったのでサイクルコンピュータで距離を見ながら進んだ。8キロくらい進んだ所にコンビニがあったので今夜の夕飯を買った。そのコンビニの近くに道の駅まであと2キロという看板があった。まさにあの売店から10キロで道の駅だったのだ。
 やっとの思いで道の駅に到着した。時間は約17時チョイ過ぎだった。もう脚はガクガク。道の駅から見える芦ノ湖は思ってた通り霧が多くそして風がかなり強かった。霧は濃いが、真っ白でなにも見えない程ではない。道の駅からでも芦ノ湖の水面は見える。時折濃い霧が通り水面が見えなくなるときもあったが直ぐに通り過ぎてまた見える。「霧」というよりも雲が流れてるといった感じだ。そんな風景を見ながらさっき買った弁当を食う。食い終わってホッとしてると寒くなってきた。昼間とは打って変って気温が低いようだ。風が強く、着てる服の汗も乾ききってないので余計に寒く感じるのだろう。サイドバックからこんな時の為に持って来た長袖のシャツを着込んだ。時間は18時。この時間にはまだ道の駅には人が結構居る。人がいっぱい居る所でテントを張るのはチョット恥ずかしかったので暫くボーっとして人が少なくなるのを待っていたが居なくなる気配が無かったので仕方なく18:30頃テントを張り、寝る前にトイレで歯を磨いた。道の駅はトイレと水はほぼ確実にあるので嬉しい。歯を磨き終えてテントにもぐりこんだ。風が強くてテントが揺れる。こんな状況で眠れるのか?と思いながら長袖の下に着ていたノースリーブのシャツだけを着替えて7時には眠りについた。

道の駅 箱根峠 で野宿
道の駅の裏にテントを張って眠った。


15日の記録。
走行距離 122.70KM
走行時間 8:44:36 (トータルの時間は約12時間00分 5:00〜17:00)
平均速度 14.0KM/h
最高速度 58.3KM/h

最高気温最低気温天気
東京34.428.1快晴
横浜33.726.2快晴
静岡31.325.5晴れ


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 16日の朝。ケイタイの目覚ましを5時にセットしていたが目覚ましが鳴る前の4時40分頃起床した。風が強く、テントを揺らしていたのと、テントの中まで風が入って来て寒かった為だ。夜中も何度か寒さとテントをたたく風の音で目が覚めた。一昨日は暖かくシュラフは必要無かったので昨晩もシュラフを用意せずにテントに潜り込んで寝てしまったが、今回は必要だった。ここは標高850メートルくらいの場所。朝晩はこの時期でも結構寒くなる。風が強かったのでなおさらだ。夜中に起きた時に寒くてシュラフを取りに外に出とうかと思ったが眠気と外の風の音に負けて取りに行けなかった。眠っていた時の服装は上は長袖のシャツ、その下にノースリーブのシャツ。下はハーフパンツだった。上半身は肌の露出が少なくそれ程寒くないが下半身の剥き出しの脚が寒かった。何か寒さを防ぐ物は無いかとテント内を見ると昨日寝る前に着替えたノースリーブのシャツが転がっていた。このシャツは丸めて枕代わりに使っていたのだが背に腹は変えられない、このシャツを履いた。そして枕が無くなったのでテントの中に転がっていた財布を枕代わりにして眠った。このシャツを履くという行為によって私の睡眠はかなり快適な物となったのだった。
 夜中にそんなこんなしていたが、起きた時はかなりスッキリした目覚めだった。まぁ、単純計算で9時間30分は寝ていた事になるのだからそれもその筈だ。ジーっとテントのチャックを開けて外に出る。ん〜寒い。曇ってる。まぁ仕方ない、ココは山の上だ。日が昇れば気温も上がるし霧も晴れるだろう。暫くボーっとしてると日が昇ってきた。時間は5時頃。どうやらココは回りの山のせいで日の出が少し遅いようだった。

道の駅 箱根峠 からの日の出
道の駅 箱根峠からの日の出 前にある湖は芦ノ湖だ 雲が幻想的


トイレで歯を磨き、顔を洗って暫く霧が晴れるのを待っていた。日が出てきたので直ぐ霧も晴れるだろうと思っていたのだが、それよりも腹が減ってきた。芦ノ湖まで下ればコンビニがあるのを知っていたので6時ちょっと前に芦ノ湖まで下った。早速コンビニに行って芦ノ湖を眺めながら朝メシを食べようと思ったのだが、芦ノ湖のコンビニの開店時間は7時だった。ショック! 開店にはまだ1時間もあるぞ。1時間待つべきか、それとも帰路を急ぐべきか・・・。そんなこんな考えているうちに結構霧が晴れてきた。

芦ノ湖から 壮大な雲
芦ノ湖から撮影 壮大な雲と青空


 ここから寮まで約60キロ。3時間もあれば十分だ。全然急ぐ必要は無いが1時間もボーとしてるのはつまらない。そういえば、携帯食に『お腹がすいたらスニッカーズ』を持っていたなと思い出して、フロントバックを漁ってみるとあった。昨日と一昨日の暑さで溶けてしまいすっごい変形していたが、今は変形したまま固まってる。とりあえず食った。んーチョー甘いが腹にたまる。私にとってスニッカーズは携帯食としてお気に入りだ。これ一本食えば2〜3時間はハンガーノックは起こらないだろう。携帯食としてツーリングの際は何時もフロントバックの片隅に忍ばせている。ただ、喉が痛くなる程甘いと言う事と、暑いと溶けてしまうのが弱点だ。周りをクッキーのような物でコーティングしてくれれば溶けても食いやすいと思うのだが。。。  ちょっと思いつきでセルフタイマーで自分の写真を撮ってみた。

おいら
何とオイラには後光が差している。わざとボカしてます


 そんな事をしてる頃、道の駅箱根峠ではお天気カメラが今日の第1枚目の写真を写していた。
んで、コレがその写真。
お天気カメラの写真
2001年07月16日06:00撮影
気温 20.17℃ 湿度 95%
雨量 0 mm/h
2001/07/16 06:00:01 観測
だそうである。この時こんなカメラの存在を知ってれば屋根に登ってでも写っていただろう。

 ちなみに、この画像は ココから取得。 トップページは 国際観光地 箱根のホームページ だ。芦ノ湖の天気や交通状況の様子がわかり芦ノ湖行くには便利なページだ。


 腹も(少しは)満たされたのでコンビニの開店時間を待たずに峠を下る事にした。芦ノ湖から箱根峠を下るには始めに多少登りがあるのだ。しかし昨日と一昨日、それ以前にも多くの坂を登ってきた。ここの登り坂も登った事があるのでこの程度の坂は全然大した事無いだろうという自信があった。しかし、思っていた以上にキツかった。汗が流れ落ちる程汗をかきやっとの思いで登った。登ってる最中、こんな長かったっけ?と思ってしまった。昨日、一昨日の疲れが残ってるのかそれとも自分の体力はまだこんな物なのか?この坂さえ登りきってしまえば後は箱根湯本駅辺りまでずっと下りだ。ガンガン下りたかったが、ここは焦らずにマイペースで下った。車も少なく快適に走る事が出来た。箱根湯本まで下りきったのは7時頃。箱根湯本からは殆ど平坦な道だ。途中小田原の手前でコンビニで第二の朝食を買い、外の駐車場で食った。まだ7時過ぎなのにかなり日差しが強い。小田原駅の少し手前、2日前に熱海に向かった分かれ道に出た。ここでツーリングのコースが丸く繋がったわけだ。伊豆半島を一周した瞬間だ。感無量だった。凄い充実感だった。小田原からはゆっくり行こうかと思っていたが、時速30キロのハイペースで進んだ。茅ヶ崎の辺りから海岸沿いのサイクリングロードを走ろうと思っていたのだが、茅ヶ崎の辺りで妙にコーラが飲みたくなり、サイクリングロードを走りながら飲んだ。こんな他愛の無い事が今のオイラにとっては至福の一時。今日は普通の人は平日なので海もサイクリングロードも人がまばらだ。綺麗な景色を見ながらゆっくり走り、乾いた喉に冷えたコーラを流し込む。なんともいい瞬間だ。サイクリングロードに入ったら寮はもう直ぐだ。  結局寮に到着したのは10時少し前。ちょっとサイクリングロードでのんびりして思ったより少し遅くに到着した。少し意外に思ったのだが、寮に着いた時もかなりの充実感を感じていたが、一番充実感を感じた時は小田原駅の少し手前の熱海方面へ向かった分かれ道だった。


16日の記録
走行距離 60.68KM
走行時間 3:02:22 (トータルの時間は約4時間00分 6:00〜10:00)
平均速度 19.9KM/h
最高速度 51.0KM/h

最高気温最低気温天気
東京33.027.8快晴
横浜32.326.2晴れ
静岡31.225.1晴れ







 この旅の景色をデジカメで撮っていたのだが、1度も電池交換せずにこの3日間使う事が出来た(総撮影枚数56枚 未収録含む)。電池の性能がいいのだ。使っていた電池はSONYの「STAMINA」アルカリ乾電池だ。値は少々張るが、性能は信頼できると思った。ちなみに、マンガン電池だと5枚も撮らないで電池交換マークが出る。

 この2泊3日の伊豆半島一周の総走行距離は335.82キロだった。

ちなみに、この旅を終えてこの自転車でのトータルツーリング距離は978.8キロだった。このツーリングで1,000キロを越えるかと思ったが、ギリギリ越えなかった。しかし、よくもまぁこんな距離を走ったなと思ってしまう。

費用:約5,000円
車種:Panasonic OSKC6(ランドナー)


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